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固形がんは、一般に低酸素環境にあることが知られています。固形がんの低酸素環境は、がん細胞の増殖速度に対して腫瘍血管の形成が追いつかず、脆弱な血管が形成されることから、引き起こされます。そのために抗がん剤のがん細胞への送達が低下し、固形がんは化学療法に対して抵抗性を示します。また、放射線図1治療の効果は酸素の存在に強く依存することから、低酸素環境にあるがん細胞は放射線治療に抵抗性を示します。更に、がんの低酸素環境は、がん細胞の転移や浸潤を促すこともわかってきています。近年、がんの低酸素環境は、がん克服のための重要な研究テーマとして盛んに取り上げられています。低酸素環境を標的とする抗がん剤の開発が試みられていますが、今のところ成功した事例はありません。

当社の自社技術であるin situ Delivery and Production System (i-DPS) 技術は、ビフィズス菌の性質を利用して、固形がんや重症下肢虚血といった低酸素環境にある病変部位を標的とするまったく新しいコンセプトのデリバリー技術であり、今後の進展が期待されています。ビフィズス菌はヒトの主な腸内細菌としてよく知られており、毒素など有害物質を産生せず、また酸素のない環境で生育する嫌気性菌です。i-DPS技術により創製された組換えビフィズス菌製剤を静脈から投与すると、酸素のない環境を好むビフィズス菌の性質により、当薬剤は固形がんを始めとする低酸素病変部位に集積し、活性体を発現、薬理活性を発揮します。当薬剤は正常組織には一切定着しないため、当薬剤に起因する副作用を低減することができます。

i-DPS技術により創製された開発品のうち、もっとも先行して開発されている抗がん剤APS001Fは、現在米国において臨床試験が進行中です。また抗腫瘍効果を有するサイトカインを発現する組換えビフィズス菌(TNFα-i-DPSとIFNγ-i-DPS)、新しいがん免疫療法を目指したイムノチェックポイント分子に対する単鎖抗体(scFv)を発現する組換えビフィズス菌(抗CTLA4-scFv-i-DPS)、ならびに、重症下肢虚血に対する組換えビフィズス菌(FGF2-i-DPS)を非臨床段階で開発しています。さらに、私たちはがん免疫併用療法をがん局所的に実現するため、 i-DPS技術を発展させて 一つの組換えビフィズス菌株に二種類の活性分子、抗PD-1と抗CTLA4単鎖抗体(scFv)を同時に発現させることに成功しています。